ポンペイショートストーリー2                                           


挨拶には気をつけて

  ポンペイの目上の人や位の高い人にする挨拶は、 一風変わった挨拶である。
声のトーンを落として、低くゆっくり伸ばして挨拶する。 日本の[なになに君]「ハイ」
とは、大違いで「う〜ら〜め〜し〜や〜」の感じで「こ〜ん〜に〜ち〜は〜〜」とやる。

  こういう挨拶をされるとなぜか人は喜びを感じる。 例えば病院や空港のロビー
などでこれをやられると、「自分はすごい!」と思ってしまう。  ある週末の夕方。
島で一番大きなスーパーに、太郎さん夫妻が買い物に来た。

  名前は、日本の名だが二人ともポンペイ人である。 このタローさん、教育委員
会の会長でポンペイの「位」も、結構上の方だった。 二人でカート(買い物用の手
押し車)を押しながら、二週間分の食料や雑貨その他必要な物を集めていく。
スーパーで行き交う人が挨拶する。 ここでは会った人みんなに挨拶するし、位の
ある人には、特に念入りに挨拶する。 トイレットペーパーまで積むとカートは、山積
みで運転しにくくなる。 一番奥の米を積んだところまで来た二人は まだ米をのせ
ていないことに気がついた。 しかしカートは一杯でもう入らない。 その時「あたし
が米もってくから、アータ、ワゴン押してちょーだい」とミセスが言った。

  1俵22キロの米袋を両手でつかんだミセスは[ウン]とばかり持ち上げて「行き
ましょ」と旦那をうながした。 レジの所まで直線で40メートル以上ある。 ミセスを
先頭に二人は、行進を始めた。 次々といろんな人が挨拶に来る。

  タローさんは「こんなに買い物してるから みんな何を買ってるのか見たいん
だろナー」と思いながら、鼻高々にカートを押して、皆が良く見えるように、さっき
より、わざとユックリ進んだ。 いつの間にかスーパーの中に列が出来て二人は
ゆっくりと凱旋した。 買い物客は出きるだけ近くに寄って「こ〜ん〜に〜ち〜は〜」
と言いながらニタニタと挨拶を繰り返した。 

  ミセスが米袋を持ち上げる時 自分のスカートも一緒に持ち上げてしまうと
なぜか中は「ノーパン」だった。 「いや ご苦労」と言う感じの、髭を生やした偉い人
を、股に挟んで、歩き進んでいるような失態を知ったのは、レジで精算した後だった。


             
ポンペイショートストーリー目次へ