そんな バナナ

 2004年、もうすぐクリスマス。世界中の人達がワクワクしていた。その頃インドネシア、スマトラ沖で巨大地震が起きた。その後に起きた とてつもない大津波に 何人もの 人達が飲み込まれ、遠くへ流された。中には何日も漂流していて助けられた人もいる。
流木につかまり 流れているヤシの実を飲み 餓えと のどの渇きをいやした。人間 切羽詰まった時には ものすごい知恵と力を発揮するものだと痛感させられたニュースを見ていて、一人の若者のことを思い出した。
この若者、後にポナペ人になるのだが その時はまだ何も知らないポナペ人?だった。
ポナペと言えば海。この若者 積極的にポナペの人達に混じって 魚捕りや カメ捕りに参加した。そしてある日 バナナ記念日を迎える。
 いつもの様に ただ参加して 分け前を貰う魚捕りに出漁?した若者 晴れ渡った空と、頬をなでる海風の心地よさに ひとり満足していた。今日は網漁に来ている。
上に浮き、下におもりのついた幅2メートル長さ30メートルほどの網を2つつなげて サンゴ礁の上にひろげ、離れた所から石を投げたり棒で海面を叩いたりして 網の方へ魚を追ってとる もっとも簡単でポピュラーな漁である。若者も一応 追い手に混じって石を投げては泳いで進む この魚がいるのかいないのか 闇雲にバシャバシャするやり方が 好きだった。大きな群れに遭遇すると 魚が四方八方へ逃げ回るので 網の方へ向けるのに 石を投げ、海面を両手で叩き、サンゴ礁の上を走り回る。それでも足らない時は 奇声をあげて追いかけまわす。ちょうど 犬に追われて逃げ回るガチョウのように いっさい世間のことは気にせず 自分の世界をはしる。

 網にかかった魚をボートに入れ終わると 待望の昼飯になる。近くの無人島へと
ボートを走らせる。ちょうど昼が終わった頃 強いスコールに見舞われた。小さな無人島、隠れる所などない。ひたすら雨のやむのを待つ。海で冷えているところへ スコールのダブルパンチを受けた若者、おなかがゴロゴロいいだした。ヤバイ!! どおしよう。あたりを見回す。何も無い。トイレも紙もない。あるわけない。若者は困った。
そのとき、隣に住む老人から聞いた話を思い出した。そうだ!あの手があった。「山仕事に行って もよおした時 拭くものが無かったら 木の葉を使え。中でも幅が広くて柔らかいバナナの葉がいちばんじゃ」老人の顔を思いうかべた。「ありがとう、お爺さん」 バナナの葉を持った若者は、藪の中ヘ消えていった。用を足した若者、何度拭いてもツルツルしたバナナの葉が役に立たない。だんだんあせってきた。え~い最後だ~!力いっぱい拭こうとしたとき、?ピッ”と、バナナの葉が破けた。そんなバナナ!葉っぱを突き破った指が 見事にトイレットペーパーに変身していた。

 老人にだまされたと思った若者、「やい!こら爺さん よくもだましたな!」うちに帰るとすぐに隣の老人の所へおしかけた。話を聞いたこの老人、歯の無い口を思いっきりあけて、涙を流してわらうと 「誰が 若い緑の葉っぱと言った。枯れた葉っぱにきまっとるじゃろーが ウヒャウヒャウヒャ」と、今度はよだれをたらして喜んだ。 

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